『人の営み』は光と影の中に
荒木珠奈 銅版画/インスタレーション作家

荒木珠奈「『人の営み』は光と影の中に」

「夜の動物に変身しよう!」
川口アートギャラリー・アトリア/2009

このように、私は自分だけではなく、周りの人と一緒にアートを作っていくということが好きです。子どもでも大人でも、他人というのは私には思いつかないようなことをするから、必ず想像以上のものができあがります。だから、ワークショップのような活動が好きで、以前は絵画工作教室を主宰したり、講師をしたりしていました。そこで注意していたのは、親御さんが口出ししないようにガードすること(笑い)。心から作品作りを楽しんでもらえるよう、心を配っていました。

現在、自分たちでグループを立ち上げて、東北の被災地でワークショップを開催することを考えています。実は4月に一度、別のグループ主催のワークショップで、被災地に入ったんです。実際に津波にのみこまれた現場に行くと、すさまじい現状にテレビで見るよりも圧倒されました。それでも子どもたちに笑顔はあったし絵の色も明るいものでした。大人にだって笑顔があり、それを見ていると、やっぱり人間、特に子どもってすごいと思いました。

メキシコのモナルカ蝶を、ムサビで飛ばしてみせたこと

ムサビって、すごく自由な大学なんですよね。短大の美術科も少し変わっていて、入試は油絵なのですが、入学すると何をやっても良いという雰囲気。例えば、最初の授業なんて畑でジャガイモを植えたんですよ(笑い)。その授業では、ジャガイモに関する作品を作るという課題が出たのですが、私は「ジャガイモの気持ちになる」をテーマに、友人達と畑に穴を掘って自分も首まで埋まり、それを写真に撮って提出しました。

大学時代の一番の思い出は、やっぱり卒業制作。「旅のつづき」という作品で、メキシコで見たモナルカ蝶をモチーフにした作品です。この蝶は渡り鳥のような特性があり、北米から数千万という数でメキシコにやってきて、ひとつの森で越冬し、また北米に帰っていきます。この、ひとつの森に大量の蝶が集結した光景というのは、ものすごく迫力があり、「旅のつづき」はそのときの衝撃を旅に重ね、表現したものです。

ただ、展示するスペースを確保するのに、すごく苦労しました。なぜなら、この作品は暗い空間の中で電球を使い、蝶の大群の道が浮かび上がってくるような表現をしているからです。そのため、明るい部屋で見るのが当たり前の、ほかの学生たちと一緒に展示することができなかったわけです。それで、私と同様に暗い部屋を使って表現したいという学生を5人くらい集め、それを一部屋に集めて展示できるようにしたいと、大学に交渉。すぐに声をかけはじめて「ダークルーム・チーム」を結成しました(笑い)。

ムサビ時代というのは、今から考えるとすごく恵まれていたと思います。例えば施設だってかなり立派なものがそろっています。さらに、自分が分からない分野に精通した仲間だって簡単に探せ、すぐアドバイスをもらうことができます。だから、自分が求めるものをいくらでも吸収できる環境があるんですよね。やっぱり、こういう環境って使わないと損ですよ。学生の方にはぜひ、この環境を使いつくしてほしいですね。

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